不動産×金融×テクノロジーでイノベーションを フォースタートアップスがハブとなり、大きなシナジーが見込める提携を実現

2022-05-16
Case Study
不動産×金融×テクノロジーでイノベーションを フォースタートアップスがハブとなり、大きなシナジーが見込める提携を実現

iYell株式会社は、20兆円の巨大市場である住宅ローン市場において、住宅ローン仲介業務をスマート化する「いえーる ダンドリ」、金融機関向けサービス「モーゲージコア」をはじめとするテックプロダクトの提供を通じて、様々な課題解決に取り組んでいる会社です。一方、SREホールディングスは、リアルビジネスである不動産事業を自ら手がけながら、その知見に基づいて、煩雑なオペレーションをスマート化するAIソリューション・ツールを開発し、不動産・金融各社に提供しています。ソニーグループの一員であり、テクノロジー面での強固な連携も武器に、リアルとテクノロジーが融合したアプローチで、真に使えるDXテクノロジーの創出を目指しています。

 

この両社が、2022年1月に当社資本業務提携支援サービスを通じて業務提携を行いました。広くは不動産・金融という同じフィールドながら、うまく補完しあい、シナジーが見込める業務提携として、両社とも今後に大きな期待を寄せています。フォースタがつないだ今回のご縁。インタビューでは両社のビジネスと背景、課題や今後の取り組みについて話を聞きました。

 

iYell株式会社

取締役 CFO 公認会計士 早坂 太一 氏

 

SREホールディングス株式会社

コーポレート本部 経営企画部 統括課長 西澤 航氏

 

フォースタートアップス株式会社

アクセラレーション本部 資本業務提携支援担当 宮本 健太

 

 

住宅ローン市場の課題解決に取り組む住宅ローンテックベンチャー

 

最初に事業内容などを教えてください。

早坂:当社は、創業6年目のまだまだ新しい会社です。自分たちでは「住宅ローンテックベンチャー」と呼んでいます。日本の住宅ローンの業界構造をお話しすると、ほとんどのユーザーさんが、住宅事業者様経由でローンを借りています。でも、実は必ずしも住宅事業者様がローンのプロとは限らないのです。なかには、あまりローンに詳しくない場合もあります。そのような業界構造にあってiYellは、住宅ローンを選ぶ「モーゲージブローカー」の役割を担うというのが、事業の本質です。実際、欧米では「モーゲージブローカー」という職業があり、知識と経験に基づいて最適な住宅ローンを選んでくれるのですが、日本にはありません。そこでiYellが、会社として住宅事業者と金融機関の真ん中に立ち、両者を結びつける事業を展開しているのです。

 

プロダクトは、大きくは2つ。1つは、住宅事業者様向けの『いえーる ダンドリ』です。住宅事業者様は、総労力の25%ほどを住宅ローン業務に費やしていると言われています。『いえーる ダンドリ』は、彼らからその住宅ローン業務をすべて引きとってしまうというもの。営業担当者は、スマートフォンアプリの『いえーる ダンドリ』を導入さえすれば、販売の現場で、簡単な操作で最適な住宅ローンを選び、お客様に提示できるという流れになっています。

 

2つ目が、金融機関向けのマッチングプラットフォーム、『モーゲージコア』です。我々のところには、『いえーる ダンドリ』経由で、日本中の住宅事業者様からローンの相談が来ます。そのデータを『モーゲージコア』に入力すると、最適な住宅ローンが3つ提示されます。それを、『モーゲージコア』の提携先である金融機関に送客するというビジネスモデルです。『モーゲージコア』には審査ロジックがすべて入っており、それとユーザー情報をマッチングさせた上で借りられるローン、つまり審査が通りやすい最適なローンがマッチングされる仕組みです。

 

金融機関側は、どのような導入背景があるのでしょうか。

早坂:これは、根深い課題があります。まず、低金利の影響で、金融機関にとって住宅ローン部門があまり儲からないこと。するとIT投資が進まず、アナログなオペレーションのまま取り残され、ますます儲からないという負のスパイラルに陥ります。実際、八方ふさがりで「どうにかしたいけど、どうにもならない」という悩みをよく聞きます。

 

金融機関にとってこのプラットフォームは、導入さえすれば自動でローンの相談案件が、しかも審査情報とマッチング済みのほぼ通る案件が送られてくるという、極めて確度の高い集客ツールなのです。従来のWebでの集客では、100件来て1件コンバージョンするかどうか、程度の確率だったものが、『モーゲージコア』ならほぼコンバージョンします。なので、集客と審査コストの面でご好評いただいていると思っています。

 

素晴らしいですね。『いえーる ダンドリ』も『モーゲージコア』も、どんどん広まっているのでは?

早坂:はい、おかげさまで。弊社の代表の窪田(代表取締役社長兼CEOの窪田光洋氏)が掲げるビジネスモデル上のコンセプトは「三方よし」。みんなにとってハッピーなことを叶えたい。それが表れているビジネスモデルだと自負しています。

 

ただ、テクノロジー面では、まだまだ足りない部分が多いです。例えば、金融機関向けの『モーゲージコア』は、工程上にまだまだアナログな部分が残っており、今のシステムをより強化するための課題と考えています。

人が介在し、最終的に人が判断する部分があるので、そこはAIの価格査定などに強いSREさんと協業したほうがよい未来が描けると思っています。 

 

リアルビジネスの知見を活かしたソリューションを展開。DX拡大に資する提携先を模索

 

SREさんサイドのお話もお願いします。御社もユニークな会社ですね。

西澤:iYellさん以上にわかりづらいですね(笑)。私たちも不動産DXの会社ですが、iYellさんとは、ジャンルは似ているけれど違う領域で事業展開しており、うまく手を組むことでより大きなシナジーが出るという考えに基づき、お話を進めてきました。先ほど、住宅ローン関連の業務が不動産仲介会社の業務の25%を占めるという話がありましたが、我々がご支援しているDXは、その残りの多くの部分。それが70%かはともかくとして、そこを対象としています。

 

実は弊社自身が、実際にリアルビジネスとして不動産事業を営んでいます。仲介、アセットデベロップメント、インベストメントというリアルの部分を持っているので、そこで経験しているオペレーションの痛しかゆしや、「テクノロジーがこうなっていたら使いやすい」と感じる部分を経験値としてためこんで、それをテック化しています。で、使える段階まで磨き込めたらいろいろな不動産会社に使ってもらうというビジネスを手がけています。

 

実際にどのような…

西澤:例えば、先ほども話に出た『SRE AI査定 CLOUD』。従来は、何十年と経験しているプロのエージェントが対象の不動産物件に対して、同じ建物内の別の部屋や、駅からの距離などで似たような条件の事例の価格を参照し、計算して査定書に落とし込んでいました。3時間程度かかっていましたが、それをAIで、マンション名と方角などを入れると10分以下で査定書が出力され、お客様に渡せばいいというサービスを提供しています。

 

ほかにも、例えば住宅ローン業務の前後の部分では、重要事項説明や売買契約などで、大変なボリュームのドキュメントが必要です。それを半自動で、テンプレートに沿ってテキストを選んでいくとできあがる『SRE 契約重説 CLOUD』など。ただし、まだやり切れていない部分も多く、このようなDXのラインアップをもっと広げていきたいと考えています。その一つとして、住宅ローンも課題に感じていたところに、今回のiYellさんとのお話をいただいたという経緯です。

 

そこでフォースタがご縁をおつなぎしたわけですが、どのような経緯だったのでしょう。

宮本:弊社とiYellさんとが資本業務提携支援の契約を結ぶ際に、iYellさんからいわゆるシナジー投資、事業会社と連携したいというご要望をいただいていました。『モーゲージコア』などを通じて、金融機関とはかなり提携関係を結べているので、どちらかというと不動産事業者向けに強い企業と連携をしたいというお話でした。

 

同じようなタイミングでSREさんとも話をしていて、SREさんからは、今、お話があったように不動産仲介事業者向けにDXを提供していくが、一部、手の届いていないところがあると。なので、不動産や金融系、かつSaaSやAIなどのスタートアップと事業連携をしながらやっていきたいという話でした。

 

双方からお話をいただいていたので、我々としては、たとえiYellさんと我々との契約ができなくても、iYellさんとSREさんを絶対におつなぎしなくてはいけないと思っていました。iYellさんとしてはSREさんと連携することで、プロダクトをさらにいろいろな事業者さんに使ってもらえる。SREさんも、住宅ローンも含めた不動産テック全体を伸ばしていく戦略の中で、iYellさんとの連携により、不動産事業者向けに新しい価値提供ができる。両方にシナジーがあると確信していたのでおつなぎし、結果として、セールスだけでなくプロダクトも一緒にやっていくという話ができた。非常にいい連携が実現できたと思っています。

 

 

初回ミーティングから好感触。プロダクトやデータ連携など1+1が2以上になる関係構築へ

 

西澤:お話したのは、2021年の夏頃でしたね。当社は、その半年前に上場市場をマザーズから一部に変更しました。創業8年目で、自分たちである程度、事業を伸ばすことができましたが、もっと成長したいし、投資家様からも成長を期待されている。ならば内製だけでなく、多様なパートナー候補の方々と話し、志を同じくする人とはアライアンスを組んでいったほうが世の中に対してよりよいビジネス、プロダクトを提供できると思っていました。

 

いくつかお話をいただくなかで、「実はiYellさんが」とお聞きしたときは、本当に即答で、すぐに早坂さんとのミーティングをセットしていただきました。

 

早坂:我々の場合も戦略的資本提携に力を入れていて、提携のお話はたくさんあるのですが、そのなかでドンピシャなシナジーが出せるパートナーは、何十件とあるなかで1件あるかないか。確率は低いです。フォースタさんからSREさんをご紹介いただいたときは、まさに1回目のミーティングで、「これはうまくいきそうだ」と感じたことをよく覚えています。シナジーという点で、必ずお互いにとって有意義なものができると確信しました。

 

それはどのような点でしょう。逆にうまくいかないケースとは。

早坂:領域としてちょっと遠い、あるいは逆に近すぎたりする場合はうまくいきません。一概にこれ、とは言いにくいのですが、例えば先方様の領域と競合する部分があると食い合うことになってしまうので、このさじ加減は本当に難しいです。

 

加えてさらに重要だと思うのは、お互いのスピード感です。大企業さんと組ませていただく場合、当社と先方様のスピード感が合わなくて、話がなくなることもあります。その点、SREさんは、我々としても見習うべきと思うほど非常にスピーディーで、スムーズに話が進みました。それが、うまくいくと思った一つの要因でもあります。

 

西澤:我々も、本当に見事なタイミングだと思いました。というのも、やはりいくつか、バリューチェーン上で我々がまだやれていない部分の提携可能性があるなかで、ビジネスポテンシャルが高い筆頭は住宅ローンでした。加えて、今のビジネスだけでなく、データの点でも可能性を感じました。先ほどiYellさんが、モーゲージの最適化において、AIを使ってさらに高度化させたいという課題をおっしゃっていましたが、我々も別の観点でそう思っています。例えばAIの不動産査定は、データが多ければ多いほど精緻なアウトプットが出せるようになるのですが、住宅ローンのデータは、まさにその超重要データの一つ。その点でもシナジーがあると思いました。

 

早坂:住宅ローンを借りるときは、収入、家族構成から、資産はもちろん親の年収までも、こんなに情報を出すのか、というほど出しますからね。それほど深く、しかも正確なデータは、住宅ローンを組むときにしか出しません。かなり貴重なデータで、ビジネスとしておもしろい活用方法が期待できるのではと思います。

 

西澤:まさにそれです。将来的に、不動産×金融の非常にクリティカルな、リッチなデータを使って、どう次のDXを実現できるか。ぜひシナジーを生みながらチャレンジしたいです。これは今後の展望です。

 

フォースタサイドは両社それぞれ、どのような点を素晴らしいと感じていたのですか。

宮本:iYellさんは、そもそも競合がほとんどいない、国内においてはほとんどテクノロジーが入りこめてない領域にチャレンジしていること自体が、非常に価値のあることだと思っています。ここが改善されていくことで、住宅ローンに関わる市場の方たちの生産性が高まりますし、関連する金融機関、不動産事業者の方々にとってもDXが進んでいくので、日本の生産性が高まることにつながります。

 

また、SREさんは、ソニーというスピード感を持つ大きな母体を持っています。ソニーさんこそ、ベンチャーから始まってここまでの大きさになった会社。これだけ歴史があるのにこれだけ速い。日本全体を見回しても貴重な存在です。さらにそこがスタートアップと連携して、1+1が2以上になる関係をつくっていくことは、日本にとって本当に素晴らしいことだと思います。

 

極端なことを言えば、SREさんに「別に自分たちでできるので、スタートアップと組まなくていいですよ」と言われれば、話は終わってしまうのです。やはり、日本企業の多くは、内製しようとする傾向が強いですから。「人はいるし、時間をかけてでもやろうよ」という気質が強い。そうやって積み上げてきた歴史もあります。

 

でも、そこにとらわれず「できるなら、外と組んでやろう」と判断する点は、ほかの企業さんにもぜひ後に続いてほしい。このような会社が、このような人が増えないと日本は変わりません。我々としても、この先もいろいろなスタートアップといろいろなチャレンジをしていきたいと、改めて思いました。

  

両社で挑戦したい課題が次々と。3社、4社、5社と手を結ぶ大きなシナジーにも期待

 

iYellさん、SREさんとしても、一緒に、さらにいろいろな挑戦ができそうですか。

早坂:そうですね。壮大な話になりますが、住宅ローン業界は、どんなに弊社がテクノロジーを活用しても、結局、受け入れ側の金融機関の申込書が紙のまま。しかも銀行によって様式も求められる情報も違います。市場全体にとって非常に非効率です。なので、今はまだ人手が必要で、最終的には人が書類を集めています。それを完全になくすことができれば、よりよい不動産と金融をつなぐ架け橋になれるのではと思っています。受け入れ側の金融機関のインターフェースを統一するとか、入口となるローンの申込の部分を、不動産会社さんとともに統一化するなどできれば、より効率化でき、生産性が上がりそうです。

 

そのような業界を変える動きをするには、やはり小さなベンチャー1社がやるより、大きい会社と組むほうが、間違いなくスピーディーにできます。まさにSREさんのような企業と一緒に歩んでいけたらいいと思っています。まず、書類の効率化にはOCRの技術が有効で、このあたりもSREさんが強いです。ここも、将来的に一緒にやりたいですね。

 

西澤:ぜひ。OCRできます。でも言わせてください。SREは大きな会社ではありません。我々もまだまだベンチャーです。二人三脚で一緒に成長するのであって、引っ張っていく立ち位置ではありません。住宅ローンは、もっとテック化していける部分があるので、我々にできるサポートは何でもして、両社で住宅ローンのDXに貢献していければと思います。

 

また、今iYellさんは、住宅ローン以外の領域も開拓し始めています。もっと広くフィンテックと捉えていいと思います。それと、我々がやってきた不動産DXの融合ということで、お互いが持つデータの連携など、うまくやっていけるところがあるはずです。不動産と金融は経済全体に占める割合も大きいし、個人レベルでも、個人家計のPS/BLに占める割合も大きい。その効率化、生産性向上に資することなら、両社で何でもチャレンジしたいです。

 

フォースタの対応などはいかがでしたか。感想や期待なども教えてください。

早坂:まず、この機会をいただいて感謝しております。フォースタさんだからこそのよかった点は、やはりベンチャーも大企業も見てきて、両方の考えていること、成し遂げたいことを踏まえた上でご紹介してもらえること。真の意味で、シナジーを考えておつなぎしてくれて、関係がうまくいくようにサポートもしてくれました。

 

宮本:ありがとうございます。そうですね。お引き合わせした後も「今、どうなっていますか」とかなりしつこく連絡をし続けました。というのも両社に対して、話が適切に前に進んでいるか、我々に何ができるかと常に考えながらコミュニケーションしていく必要があるからです。極端な話、ダメならダメで打ち切ったほうがいい。両社にとって組む意味がありそうかと見極め、あれば前に進むようにフォローしていくのが、我々の役目だと思います。

 

西澤:確かに背中を押していただきました。「行きましょう!」という感じで。我々も普段、いろんな案件を同時並行で考え、現業もあるなかで進めるので、自分だけだったら、そのときの優先順位で、そこに割くキャパシティが小さくなることもあるでしょう。今回は、おかげさまで常にiYellさんのことを考えていられたと思います。このようないいご縁にしていただいて、ありがたく思っています。

 

早坂:これからは2社だけでなく、エコシステムとして、何社かを合同でつないで大きなことを成し遂げるようなこともあるといいですね。いろいろなパイプラインを持っているフォースタさんだからこそ、そんなことが可能かもしれません。

 

西澤:完全に同意します。フォースタさんはハブになってくれる。リレーション、コネクションが強いので、ハブであるフォースタだからこそ見える、2社だけではない、3、4、5社のマルチの企業が手をとりあったときの、ものすごい大きなシナジーの世界があるのではないかと思います。ピンと来たときは、SREにもお声がけしてくれるとありがたいです。

 

宮本:それはまさに、我々がやらなければいけないことです。これまでは1対1のお引き合わせが基本でしたが、「こことここともセットでいけると、もっと大きなシナジーがありそうですよ」という提案をできるといい。意識して、進めていきたいと思っています。

 

ところで、人材も絶賛募集中ですか。

早坂:はい。今回、SREさんも含めた資金調達を2月にクロージングして、総額で35億円を調達しました。使途の一つとして人材採用にも力をいれていくつもりです。

 

西澤:当社も絶賛募集中です。採用はiYellさんの取組みから学ばせていただくこともありました。これまで、ほぼリファラルで採用していると聞いていて素晴らしいなと。一度、早坂さんにご紹介いただいて、弊社の人事担当が、iYellさんの人事責任者の方に話を聞きにいきました。そこでも交流しています。せっかく提携しているので、いろいろなところでシナジーがあってもいいと思います。

 

早坂:事業だけでなく、つながりが深くなって何でも相談しあえる、いい関係だと思います

 

宮本:そうですね。月並みですが、ここからがスタートですね。今後、また新しい連携の可能性が出てくれば、我々としても支援したいと思いますし、「こういうことが必要」とご要望いただければ、我々の会社全体で様々なリレーション、ネットワークを活用しながら、住宅テック業界全体を一緒によくしていきたいと思います。ぜひ、これからもよろしくお願いします。

 

早坂、西澤:よろしくお願いします。

取材のご協力:iYell株式会社、SREホールディングス株式会社

https://iyell.co.jp/

https://sre-group.co.jp/

インタビュー:山田雅子

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