【HEROES7:カケハシ 高木氏】社会へのインパクトを求めてスタートアップへ。日本の医療体験を変える一助に

2021-07-16
Engineering Careers
【HEROES7:カケハシ 高木氏】社会へのインパクトを求めてスタートアップへ。日本の医療体験を変える一助に

フォースタートアップス(以下、フォースタ)では、エンジニアに特化した専門チームであるエンジニアプロデュースチームを作り、スタートアップに対してキーマンとなりうるCTO・VPoE・エンジニアのご支援をしております。

株式会社カケハシは、「日本の医療体験を、しなやかに。」というミッションの下、医療の受け手と担い手、双方の体験をアップデートしようとしている会社です。現在は、薬局のDX化を進め、患者満足と薬局の働き方改革の双方を支援する薬局体験アシスタントシステム「Musubi」(ムスビ)など、複数のサービスを展開しています。

2016年に、武田薬品工業出身の中尾氏とマッキンゼー・アンド・カンパニー出身の中川氏が、日本の医療の「あるべき」を考えて設立した同社には、名だたるスタートアップやメガベンチャーでマネジメントやテックリードを担ってきたメンバーたちが集結。

今回はその一人、高木氏に話を聞きました。高木氏はSRE(Site Reliability Engineering)チームの一員として、カケハシの全プロダクトのサービスの信頼性と開発生産性について、主にDevOpsの観点から運用・改善しているほか、セキュリティーの担保や改善など幅広い責務を担っています。


高木氏
新卒で生命保険システム子会社に入社。システムエンジニアとして経験を積み、その後、ITメガベンチャーに転職。約5年間在籍し、プラットフォーム基盤の技術責任者を務めた。2019年8月、カケハシに入社。

日系大企業→メガベンチャー。次は新しい環境を求めてスタートアップへ

現在の仕事内容について教えてください。


高木:一般的にはSREというと、まずはサイトの信頼性担保がミッションとなりますが、我々の場合はもう少し広くとらえています。非機能要件全般、具体的には開発生産性や品質管理、インフラに近い部分なども含めた開発以外の全てを運用・改善していく仕事となります。

進め方としては、我々がそれらを全て担うのではなく、各チームが自立して改善を進めていくように仕向ける形です。モチベーションを上げていく、質問に回答する、ツールを導入し、定着して成果が出るまで回していく、といったところが、具体的に我々が取り組んでいる内容です。オンボーディングなども含めて開発エンジニアが活躍できるように、テクニカル的なサポートをする役割です。

カケハシに来る前のご経歴、ご経験を教えてください。


高木:キャリアのスタートは、生命保険会社のシステムエンジニアでした。SEなので取りまとめや要件定義の仕事が中心で、イメージとしては延々とドキュメントを書いているような…。開発の経験を積みたかったのですがなかなか叶わず、業務外の時間で、自分でコードを書いていました。実績を示して希望を出して、在籍している期間の後半では何とかウェブ開発に携わることができました。

ただ、自分のやりたいことを成し遂げるには、そこで成果を出していくのは難しいと感じたのでメガベンチャーに転職をしました。スキルでギャップがあるのは覚悟の上で、まずは飛び込んでみようと思いました。多少、経験が少なくても歓迎してくれそうだったので、そのメガベンチャーを選びました。

一定ウェブ開発に携わった後、技術責任者として各サービスを横断したセキュリティー対策などを行っていました。これは今の仕事に近く、自分が手を動かすというよりは、開発メンバーのスキルを上げることで全体的な底上げを図るようなアプローチでした。

そのメガベンチャーでの経験を通じて、チーム全体へと志向が向くようになったのでしょうか。


高木:それもありますが、どちらかというと年齢も30歳近くになって、技術専門で行くには差別化が難しいと考えたことが大きいです。世界トップレベル水準で技術力の高い人とはこれから差が開く一方。ならば自分は、周りのメンバーをサポートする役割でキャリアを築いていこうと考えました。

その頃、ちょうど会社の体制が変わるタイミングで、仕事の希望を言える状況にありました。周りは開発が好きという人が多いなかで、自分は非機能寄りに興味があったのでSREに。たまたま、アメリカでGoogleのカンファレンスに参加する機会があり、そこでSREの話を聞いて可能性も感じていました。

帰国後は、カンファレンスで聞いたポイントを当時のチームで展開し、実践していきました。それによって、例えば障害が起きたときの解決までの平均時間を短縮したり、そもそも障害が起きたり、止まったりすること自体を減らしたりと、一定の成果を出すことで貢献できたと思っています。

その後、転職を考えたのはなぜでしょうか?


高木:物事がなかなか進まないと感じたんです。要因はいろいろありますが、大きいのは事業ドメインが多岐にわたる会社だったので、要求もバラバラで調整にかける時間が多くなっていたこと。世の中はどんどん変わっていくのに調整に時間を割いていたのでは、そのスピードに追い付けないと思いました。自分のやりたいことを成し遂げるには、別の場所がいいのではと考えていたところでフォースタさんに相談し、カケハシを知りました。

転職に際しては、前々から社会に対して良いインパクトのある会社という軸を一貫して持っていて、加えて、スタートアップが良いと思っていました。理由は最初が日系の大企業、次がメガベンチャーなので、それらと比べて環境として新しいから。いろいろと新しいことにチャレンジできることが良いと思いました。

もう一点、スタートアップは1人の人間が与えるインパクトが大きいことも理由の一つです。大きい会社では、1人加わったところで会社としてのスピードが上がるわけではありませんが、スタートアップは一気に動く可能性があります。会社が動くとスタートアップとして結果を出せ、社会が速く進む。このインパクトが魅力でした。

カケハシへ。あまりにいい人が多くて驚く。サービス志向で意欲的なエンジニアたち


いくつか選択肢があったなかで、最終的にカケハシを選んだ決め手は何でしょうか。



高木:簡単に言えば、80歳になった自分が人生を振り返ることを想像したとき、「医療の課題解決に携わることができたら後悔しないだろう」と感じたからです。元々、SREの文脈で医療安全などにも触れることがあって関心がありましたし、医療費の問題に対してももっと良くしたいと思っていました。なので、そこにインパクトを与えられる事業なら、世の中の多くの人にインパクトを与えられると考えました。

あとは規模感が重要でした。僕はどちらかというと、最初の1人目ではあまりバリューを出せないタイプなので、全体に対して関わっていく立ち位置をイメージすると、ある程度人数がいたほうがいい。当時のカケハシは、エンジニアは10数人で、これから増やしていくフェーズであったこと、加えてアーキテクチャ上の課題なども聞いていて、ここなら自分が価値を出せそうだと思いました。

入社して、改めて感じたカケハシの魅力は。



高木:まず「いい人が多いな」と思いました。こんな会社があっていいのかと。これはなぜかと考えると、今、私自身も採用する立場なのですが、やはりバリューに対する親和性を見るような質問を投げかけているからだと思います。バリューは6つあって、「変幻自在」、「価値貢献」、「高潔」などどれも特徴的。私は特に「変幻自在」に関して聞くことが多いですね。私だけでなく全員が、その方のスタンスや経験とバリューとの接続を見ているので、結果、「いい人」が集まるのだと思います。

カケハシの魅力はほかにいくつもありますが、1つは仕事がしやすいこと。余計な仕事がない。余計な仕事とは調整や根回しのことで、これらは必要ではあるのですが、量が問題です。そればかりだと価値を生み出すことができません。例えば誰かに何かを頼むときに、頼む前に作戦会議をするといった不毛な仕事はなく、純粋に率直に仕事ができます。直接、誰とでも話せて何でも頼めますし、しかも快く引き受けてくれる。

もう1つは、サービス志向の人が多いこと。エンジニアだと、なかには技術がすべてという人もいますが、カケハシは違っていて、「ちゃんと価値を出していこう。結果を出そう。」という人ばかり。これは非常に重要なことだと思っています。

エンジニア組織としても、非常に気持ちいいですね。


高木:そうですね。サービス志向については好き嫌いがあるでしょうが、人によって志向がバラバラだと組織としてコトに向かえなくなってしまいます。カケハシの場合は、サービス志向のメンバーがそろっているので、合う人にはとことん合うと思います。みんな、カケハシが取り組んでいる医療の問題に対して課題感、使命感があり、解像度も高い。「こんな機能が必要」といった提案もどんどん出てきますし、優先順位付けも含めて「こちらのほうが、ユーザーにとって価値だ」といったことも日常的に話しています。スクラムもきちんと回しているので、その点でも仕事はしやすいと思います。

エンジニアだけでなく全体の話としては、業界特有の用語が通じるのも気持ちがいいですね。「バーンレート」など、スタートアップ系でよく使う用語はいくつかありますが、それがきちんと通じる。つまり、みんなが自主的に勉強しているということです。意識の高さの表れでもありますし、言葉がストレスなく通じるということは、良好なコミュニケーションや課題共有にもつながっていきます。

スタートアップ転職への不安はない。ダラダラと過ごしていることのほうが不安だった

転職時にスタートアップを希望したとのことでしたが、逆に不安はなかったのですか。


高木:それはないですね。考え方として最悪のパターンから想定するのですが、スタートアップの最悪パターンは、やはり倒産。でも別に構わないな、という結論に行きつきました。コロナ禍で鮮明になりましたが、GDPが落ちてもエンジニアの需要はある。倒産したところで、いくらでも新しいところに行けるわけです。それに、そのスタートアップが道半ばで倒産したとしても、世の中をちょっと前に進めたわけですから。

むしろ私は、世の中に何のインパクトを与えることもなく、ダラダラしていることのほうが不安です。それは採用側になってさらに実感しました。何年もくすぶっていた人に来られても評価が難しい。ならばスタートアップでもそうでなくても、もっとおもしろいところに行くべきだと思います。

キャリアという言葉は好きではないのですが、敢えて、スタートアップで形成可能なキャリアを挙げるなら、方向性は2つあると思います。計画性と偶発性で、スタートアップでは両方向が可能です。自分で計画的にキャリア形成しようと思ったら、いろいろな人がいて変化が多い中でも、他人の許可など求めず、自分の計画に基づいてただただやればいい。例えば企画の仕事がしたいのなら今すぐ、こんなインタビューを読んでいないで早くやれと(笑)。偶発性も、スタートアップだといろいろなことが次々と起こるので、いい意味で場当たり的に経験を積むことで、キャリアが形成されます。あれこれ考えずにとにかくやれば、キャリアは自然とついてきます。

キャリアには長さと密度があり、同じ10年でも、本当に10年の経験を積んだのか、1年を10回繰り返しただけなのかでまったく違います。これは大きなポイントで、振り返ると僕も、最初の会社には何年もいましたが、半分くらいの密度だったと思います。本当にそれが妥当な長さか反省することが大事です。

密度は、困難な仕事をクリアすることで濃くなるので、余計な仕事をしないことですね。先ほど、カケハシは余計な仕事が少ないという話をしました。延々と調整をしていたりすると、似たようなキャリアで似たようなロールでも大きな差がついてしまいます。1日、1年の時間の使い方は重要です。

ちょっと方向性は変わりますが、付け加えるなら、失敗すると伸びることは確かです。その点、スタートアップはみんな失敗してるので(笑)、失敗しても目立ちません。冗談のように言っていますが大事なことで、結局、それでみんな成長します。みんな失敗しているから恥ずかしくない。許される。そうやって次々と挑戦ができるわけです。

実体験に基づいたお話でとても参考になります。


高木:加えて、転職を迷っている人に伝えるとしたら、転職というオプションを持っておいたほうが、率直な意見を言えていい。まずいことになったとしても、辞めればいい。そう思っていると本質的なことが言えて、「中々いいこと言うね」とポイントが上がります。言うのはタダなので、保身に走らず、「誰かが傷つくのでは?」と気にせずに言ってみることです。実際に転職はしないにしても、結果的に、そのスタンスでいたほうが評価されるという面はあると思います。

最後に今後、やりたいことなども教えてください。


高木:基本的には、今までやったことのないことをやりたいですね。これまでもそうやって動いてきました。今も、一般的にイメージされるSREとは違うことをやっていますが、そこも変わってもいいと思いますし、数年後は、まったく違ったことをやっていてもいい。

組織としては、今はエンジニアが約30人の体制ですが、これからさらに大きくなっていきます。となると、各々のエンジニアが自立して、非機能要件に限らず、サービス全般に対して責任を持つというスタンスをいかに確立し、回していくか。これが入社以来の変わらない課題です。これができれば、今後、拡大してチームが増えても非常にやりやすくなるので、まずはこれを第一関門として、継続して取り組んでいきたいと思います。

計画性と偶発性など、参考になる話がたくさんありました。カケハシさんが今後どのように成長していくのか、とても楽しみです。ありがとうございました。


インタビューご協力:株式会社カケハシ

for Startupsエンジニアプロデュースチーム

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