大手からの挑戦。意識の変革を経て、市場に向き合い続ける黒子役

2022-12-02
大手からの挑戦。意識の変革を経て、市場に向き合い続ける黒子役

尾崎睦(Mutsumi Ozaki)のフォースタートアップス(以下、フォースタ)入社は大胆なものだった。大手企業のバックオフィス出身であり、営業は未経験。入社と同時に東京へ単身赴任を決めるという、なかなか類を見ない転職。苦戦しながらも努力を続け、現在はヒューマンキャピタリストの様々な活動を期待の120%の出来で返し、組織に着々と貢献する存在だ。

スタートアップに関わりたい一心で転職。最初は覚悟不足で苦労の日々

▲前職のCVC時代(前列左が尾崎)

前職は大手スポーツメーカー。広報・IRを6年、その後CVCを経験したのち、フォースタへやってきた。安定した会社の華やかな部署。「なぜ転職?」と思う人もいるかもしれない。実はCVCへの異動は、本人にとってもサプライズ人事だった。「当時、別の部門に異動希望を出していたんです。なぜ私が?という思いばかりでした。」ところが、行ってみると大きく視点が変わった。「世の中には、世界を変えようと本気で取り組んでいる人がいると知ったんです。スタートアップを支援することで間接的に新しいものを、新しい価値をつくることができる。とても意義を感じました」。

その後ジョブローテーションの観点からまた異動に。在職中、頑張って広げた人脈。懸命にインプットした知識。この仕事を続けたかった尾崎は転職を考えた。相談のために訪れたのがフォースタだった。

「さまざまなスタートアップの話を聞きましたが、フォースタのスタンスに最も魅力を感じました。第三者的に支援する。それを『人』でやるのがいいなと思ったのです」。尾崎はフォースタにジョインすることになった。

大手かつバックオフィス部門からのヒューマンキャピタリストとあって、当初は苦労した。「スタートアップに関わりたいという思いだけで飛び込んだものの、覚悟を持てていなかったのだと思います。例えば『KPIを追う』ということがわからない。『これ、全部やるんですか?』という感覚で、プロセスの意味や大切さなどもわかっていませんでした。念願だったスタートアップに関わる仕事ができる喜びは常にあったので気持ちは折れませんでしたが、アンラーニングするのに2年かかりました」。

「できるまでやるのが仕事」。真剣に向き合ってくれたメンバーの言葉が転機に

なかなか成果を出せない日が続いた。今となっては、その理由がわかる。「周囲から大事なことを教えていただいていたのに、自分が咀嚼できなかったのです。経験がない分、言葉が入ってこなかったのだと思います」。

転機になったのは、共に企業に伴走するメンバーの言葉。「『できるまでやるのが仕事です』と言われたのです。それまでは、心の隅で『これだけやってできないなら仕方ない』と思っていました。その考えをやめようと気持ちが切り替わりました」。

考えて考えて、やれることを全部やる。そう振り切って以降、仕事に向き合う姿勢が変わった。「単純な話かもしれませんが、ストレッチの目標に対しても『やれる方法を考える』ようになりました」。

今一番注力しているのは、変わるきっかけとなったメンバーと共に担当するA社の支援。「エンジニア採用を中心としたご支援をしています。エンジニアやプロダクトマネージャーはいま市場で極めて需要が高い状況。時には先方の評価制度にまで踏み込んで課題提起をしています」。難易度は高いが、できるまで伴走するという覚悟で取り組んでいる。

チャンスボールへ前向きに挑戦。ヒューマンキャピタリストの可能性を広げる

尾崎は、ヒューマンキャピタリストとして転職希望者・担当企業に向き合う以外の活動も多い。CIC Tokyoが運営していたオンラインラジオ『CIC LIVE - スタートアップ、挑戦者たちのリアル』の運営、スタートアップで活躍するエンジニアのインタビューしているオウンドメディアの『HEROES』、年始の社内イベント『ことよろスタートアップス』のTwitter配信などを経験してきた。やりきろうと取り組んでいる姿に、周りが声かけをする。そして尾崎はそれを、「チャンスボールを次々ともらえてありがたい」と前向きに受けとめる。

「特にラジオの『挑戦者たちのリアル』とオウンドメディアの『HEROES』は影響が大きかったです。『挑戦者たちのリアル』では対話の場数を経験させてもらいました」。当日までのやりとり、放送前の顔合わせなど、ゲストとのコミュニケーションを中心に諸々の裏方業務を担った。「なかなかお話することのない界隈の著名人ばかりで、最初は気後れしていました。でも、何度も機会をいただくことで徐々にコミュニケーションをためらう気持ちがなくなっていったのです」。

「HEROES」は、「前職が広報だからできそう」の一言で降って来た。コンセプト作りから立ち上げて、既に1年半。「『HEROES』に登場いただくのは、フォースタがご支援したスタートアップでご活躍されている方。皆さん再現性を解像度高く言語化されています。25件以上の記事に携わる中で、スタートアップで活躍されている方のマインドセットを、自分の言葉で説明できるようになりました。取材を通じてその企業の人事・広報の方ともつながりができ、ご縁の一つひとつが大切です」。

こういった活動を通じて、ヒューマンキャピタリストの提供できる価値の幅広さと伸びしろを感じているという。「ラジオも『HEROES』も、すべて私にとってはスタートアップを支援する1つの手段。そこで得たナレッジを、自分のようにスタートアップに飛び込みたい転職希望者にも伝えたいし、成長痛を感じる起業家にも伝えたい。ヒューマンキャピタリストの動き方に決まりはないからこそ、責任を果たしながら、全員が違う価値提供ができる組織になれば、エコシステムへの貢献はもっと増えます」。

スタートアップを文化に。地道な努力でフォースタを起点に、未来を作る

▲VCの方とオフラインの情報連携も行う

こういった尾崎の姿が見られていたのだろう。最近、また新たな声がけがあった。それは、ベンチャーキャピタル(VC)と情報連携を行う窓口だ。世界に打って出る企業が出てくる領域をために、刻々と変わる世の中の情勢に関して情報連携を担っている。

元々IRで上場市場には向き合っていた。その経験からか、市場の動向には気を張っている。資金調達のプレスリリースが出れば、どのような事業・領域かを調べる。「はっきり言って地味です」と尾崎は笑うが、次のように続ける。「知見を地道に蓄積することで、フォースタがご支援していく市場を探索できると考えています」。

トッププレーヤーが脚光を浴びる一方で、地道に支えているメンバーがいる。「目に見える成果にモチベーションを感じる人のほうが多いと思いますが、私は”自分が組織の未来に資すると信じられること”がモチベーションになるんです」。黒子役を進んで引き受ける尾崎の姿を、周りはちゃんと見ている。寄せられる信頼が何よりの証だ。また、地道な活動は、成長という確かな報酬をもたらす。「フォースタに来て2年半。自分からインプットしに能動的に動ける、また、無限にインプットが降ってくる環境で、成長速度が上がりました」。

当初、転職を後悔した日もあった。今は迷わない。「起業家の本気をリスペクトし、熱量高く応援するフォースタのカルチャーが好き。社内に対しても、同じ熱量でぶつかれる、すごい組織だと思います」。培ったその熱量で、スタートアップ、大手企業、ベンチャーキャピタルの垣根を超え、スタートアップエコシステムに貢献し続ける。

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