支援実績

Startup Lightsはスタートアップ企業を基点として、社会課題を解決していくためのプロジェクトです。意志を持って未来を変えていく行動を取っている企業や人を” Light(光)”と捉え、その”Lights(光)”を集めることで、課題解決に向けた取り組みを力強く推進していきます。
今回はStartup Lights認定企業である、ユニファの代表土岐さんとCFOの星さんにお話を伺い、どのようにして多様な組織づくりを実現しているのか、紐解いていきます。
ISSUE 1/2では、なぜ現状の組織状態になっているのか背景を伺いましたが、本編では多様性があることで、具体的にどのような組織や事業へのインパクトがあるのかという点を伺いたいと思います。

家族の幸せを生み出すあたらしい社会インフラを世界中で創り出す
IoTやAIを活用した保育施設向け総合ICTサービス「ルクミー」シリーズを提供するスタートアップ。「ルクミー」シリーズは、乳幼児の午睡を見守る「ルクミー午睡チェック」、子どもの写真・動画をオンライン購入できる「ルクミーフォト」、デジタル連絡帳等計14のサービスによって構成されている。子どもの安全・保護者の安心・保育関連業務の負担軽減を実現し、保育現場における課題解決を通じた保育施設の社会インフラ化、女性活躍の推進や労働人口の増加を支援。2022年10月時点で、同シリーズのサービス導入数は累計15,000件超、約60か所の自治体に導入されている。ユニファの全サービスを導入した“スマート保育園”のモデル園では、月に65%以上の業務時間を削減した施設も存在する。同社はJ-Startup 2021にも選定されている。2021年6月には、クロスオーバーの海外機関投資家やESG・インパクト投資家等を中心に、国内外の投資家から総額40億円のシリーズDの資金調達を実施。また、ESGをより重視した経営体制の構築・ガバナンス体制強化を目的に、新社外取締役を3名迎え入れ、監査等委員会設置会社へ移行した他、2022年6月には未上場企業としては先進的な取り組みとして「マテリアリティ」を特定し、特定プロセスと共に社外へ公開している。今後、プロダクト開発、顧客施設拡大に向けた営業・マーケティング施策、人材獲得、M&A等に注力し、中長期的な成長を加速させていく方針。
土岐 泰之 (Toki Yasuyuki)
代表取締役 CEO
2003年に、住友商事に入社。リテール・ネット領域におけるスタートアップへの投資及び事業開発支援に従事。その後、外資系戦略コンサルティングファームであるローランドベルガーやデロイトトーマツにて、経営戦略・組織戦略の策定及び実行支援に関与。2013年にユニファを創業。全世界から1万社以上が参加したスタートアップ・ワールドカップにて優勝したことに加え、採用率が全世界で2.5%未満であるEndeavor(エンデバー)起業家に満場一致で選出されるなど、国内外で高い評価を受ける社会起業家。
星 直人 (Hoshi Naoto)
取締役 CFO
2007年に、外資系証券会社であるモルガン・スタンレー証券の投資銀行本部に入社。東京・ニューヨークオフィスで約12年間勤務。テクノロジー・金融・コンシューマー領域を中心に、国内の経営統合案件や米国関連のクロスボーダーM&A案件を主導。一般的なM&A業務に加えて、アクティビスト対応や企業価値向上策に関するアドバイザリー業務にも従事。2019年にユニファへ参画し、CFOとして財務戦略や各種戦略的施策を主導。インパクトスタートアップ協会(Impact Startup Association)の設立にも関与。
中田:具体的に女性マネージャーの比率が増えたことによって、組織の変化や影響を感じることはありますか。
星:そうですね。やはり多様性がある方が当然色んな意見が出るので、クリエイティブかつイノベーティブなアイデアが生まれやすいと思っています。
同質性が高いと感覚が近いので、無意識のうちに同じようなアイディアばかりになることがあると思うんですね。ディスカッションはやり易いと思いますし、コミュニケーションコストが低いという捉え方もあると思います。
ダイバーシティが高ければ高いほど、やはり意見が分かれるんですよ。しかし、意見が分かれることの方が、コミュニケーションコストはかかることを前提に、多角的な視野でいろんなことを考えた上での意思決定ができるので、同じ結論になったとしてもいわゆる”ブラインド(自分からは見えない部分)”を理解した上で意思決定ができているので、納得感が高まっている実感はあります。やはり1人で考えることには必ず限界があるので、検討の過程では、絶対に多様性があった方がいいと思いますね。

中田:ありがとうございます。組織へのインパクトについて理解ができました。短期的な業績や事業の成長にインパクトを与えている実感はありますか。
土岐:結局はビジネスイシューに対してちゃんと解が出せるかどうか、という点でインパクトを出せているのだと思います。
例えば弊社にはシステムの守り神のような女性エンジニアのマネージャーがいるのですが、彼女はエンジニアとしての経験も豊富で、前職では海外で外国籍のエンジニアのマネジメントも経験しており、大活躍していました。そのような優秀な方がなぜ入社をしてくれているのかというと、きっかけはルクミー午睡チェックというプロダクトでした。そのプロダクトは、体動センサーの医療機器であり、お昼寝(午睡)中の事故を防ぐプロダクトです。
彼女の価値観の中で、子どもの命を守ることに関わることが出来るという点に深い志を持っていたため、入社してくれました。今のシステムの安定性を彼女が担ってくれており、本当に我々にとって必要な存在です。
事業のストーリーと個人のストーリーがあり、それが当てはまって事業をつくることができている。明らかに人間のドラマのようなものが事業とPLをつくっていると感じています。
つまり、そのような多様な人の物語を紡いでいくことができれば、最終的に大きなビジネスインパクトになると思っています。
昨今では人材獲得の競争も激しく、年収もどんどん高騰してることもよく理解しています。勿論そうした待遇の話も大事なのでその点においても努力しつつ、それ以外のものが同じくらい、むしろそれ以上の熱量で語れるストーリーがありますか、というところが最後に経営が問われると思います。
結局は、さまざまな人が集まる物語があるかどうか、その求心力があることで必要なスキルと志を持った人が集まり、短期的な事業成長にも、またファイナンスにもつながっていると感じています。
中田:同じ志を持つ人を”どれだけ集められるか”という点が事業とPLを作り、成長し続ける上で大事ということですね。

中田:ファイナンスにも繋がっているというお話が最後にありましたが、投資家から、現状の多様な組織がどのように評価されているのかという点について教えていただけますか。
星:現状、評価していただいているポイントが2つあると思っています。「姿勢」があるかという点と、「姿勢」だけではなく、きちんと「行動と数値」もついてきてる点です。
繰り返しになってしまうのですが、あくまで結果指標であって、何か無理やり短期的な施策をやったりしてるわけではないのですが、ただ多様性やジェンダーバランスの重要性を口で言っているだけではなく、きちんと行動と数値もついてきていること、それを未上場の段階から推進をしていることに高評価をいただけています。
ただ勿論、様々な投資家さんがいらっしゃるので全員が我々の取り組みを評価してくれる訳ではないですよ。ESGを重視する投資家さんもいれば、ESGへの興味・関心が低い投資家さんもいるので。ただ、逆説的ですが、そこも多様性の一部なのかなと捉えてます。
中田:興味がある投資家、ない投資家はもちろんいると思いますが、もしユニファさんがESGや多様性について取り組んでいなければ、その興味がある人たちにはもうタッチできないですよね。その観点でいうと可能性を広げられているということでしょうか。
星:そうですね。投資家の方にもダイバーシティがあると思っていて、伝統的なロングオンリーもいれば、ヘッジファンドもいれば、個人の方々もいる中で、ESGへの取り組みは(興味を持ってくれる)投資家の層を広げる活動だと思います。
スタートアップだと、どうしても中小型・グロース銘柄というカテゴリーになり、関心のある投資家の数も限定的だと思っています。ただ、違うアングルを入れることによって、その裾野がどんどん広がる可能性は十分にあると思っています。だからこそ、ファイナンス戦略上も、ESGを推進することは非常に合理的な判断だと思っています。
中田:「姿勢」を見せるという観点で、ユニファさんは具体的な取り組みについての発信が多いなと感じていますが、詳細について教えていただけますか。
星:2022年6月にマテリアリティを開示しました。未上場企業でマテリアリティを開示したスタートアップは僕らが初めてではないかと、ESGの専門家に教えて頂きました。
この取り組みは、勿論、大変でした。ステークホルダー20名以上にインタビューを実施するなど、リソースを使って真剣に取り組みました。
マテリアリティの開示は現状特別に求められているものではないですし、上場企業でもないのになぜそこまでやるのか、というところでいうと"Do the right thing" とよく言うんです。僕らはインパクトスタートアップとして、自分たちにとって正しいと思うことをやって、世の中を良くしていきたいと思ってます。その上で、近視眼的でなく中長期の視点からやるべきだと思って取り組んでいます。
また、取り組みにあたっても、「最初から100点は取れない」というスタンスを持っています。僕はもともと大企業側のキャリアということもあり、今回ユニファがやってることが、本当の意味で100点を取れてるとは思っていないんですね。でも100点か0点かではなく、「60点・70点でいいから始めてみる」ということが、スタートアップのとるべき姿勢としても正しいかなと。
また、スタートアップってやっぱり日本にとっての未来じゃないですか。そういった人達が自分たちの信念を持ち、正しいと思うことをやり続けるということによって、次世代の方々にも何らかの刺激を与えられたり、参考になるのではと思っています。「自分たちができることから、一歩一歩始めようよ」と、そうでなければ社会は良くならないよねという思いが強いですね。

中田:ありがとうございます。今まで”組織全体の多様性”について伺ってきましたが、経営陣の多様性にフォーカスして伺いたいと思います。
多くの企業において経営陣のジェンダーバランスが偏っているケースが多いですが、ユニファさんには社外取締役で2名の女性の方がいて、更なる増員も検討されていると伺っております。経営陣の多様性についてはどのように、またどのような意図を持って取り組まれていますか。
星:土岐と僕で、相当しっかり話をして今の状態になっています。
本来であれば(ジェンダーバランスにおいて)フィフティフィフティを目指したいという前提の中で、残念ながらいま日本社会全体で経営層のジェンダーバランスは男性が多くなってしまっていますよね。
そのような中で、経営陣自体にもジェンダーバランスを意識して取り入れなければ、「姿勢」がメンバーに伝わらないと思っています。ガバナンス体制強化のために監査等委員会設置会社へ移行するタイミングもあり、僕らの思想としても、従業員のためにも経営陣のジェンダーバランスも改善をしようと話をしました。
当然ながら、今後は社内からの昇進も含める形で、目指すべき経営体制を実現できるようになることが一番正しい姿だとは思っています。
中田:おふたりとも素晴らしい方で、性別関係なくそれぞれの持つスキルと経験をもってご活躍されているという認識をしている上で、敢えて伺います。経営陣のジェンダーバランスが変化したことで、会社やプロダクトに良い影響や変化があると感じることはありますか。
土岐:そうですね。前提として女性だから男性だからではないにしても、我々は保育施設に通う保護者向けのサービスを展開していて、そのほとんどの場合に”母親”がお財布の決定者という場合が多いので、ユーザーに近い視点での意見を貰えていると感じます。
その上で、それぞれのスペシャリティを発揮していただいているので経営会議や取締役会での話の内容はとてもバランスがよく良い議論ができていると思っています。
中田:もしユニファさんのように経営陣のジェンダーバランスから取り組む「姿勢」を見せたいという経営者がいるとして、どのようなアドバイスをしますか。
土岐:まず、その会社が持つ強みを活かしたらいいと思います。
実際、なぜ社外取締役の方々に選んでいただけたかというと、やはり共通の問題意識や、過去のご経験との親和性、子ども達の健やかな成長を願う思いなど、我々のパーパスへの強い共感があったからだと思っています。
どの会社でも通用するストーリーではなくて、自分たちは何をやっていて、その上でどんなパーパスを掲げているのかなど、オリジナルのストーリーがあるはずなので、それを丁寧に紡ぎ、伝えるというところからスタートするべきだと思います。

星:そうですね。またもう一つ大事だと思うことは、「強い信念を持ってやる」ということです。
やらない理由・やれない理由を探し始めたら100でも200でも出てくると思っているので、そのような中でどうやったらできるのかというと、そこはもう決めてやりきる。
中田:「やり切る」と言うのは簡単でも、行動にうつすのはとても大変ですよね。
土岐:なぜやり切れたのかという点でいうと、星の存在が大きいと思います。
やはり目先のPLを作らないといけないところと、中長期の組織作りやガバナンスの観点を同時に進める必要があるというときに、それが出来る経営体制が重要で、僕一人では絶対に無理だったと思います。
強い意志をもち、中長期の観点で今これを仕込むべきだとなった際に、分担が経営陣の中でできるかどうか。代表1人で推進するのではなく、経営陣全体も巻き込んで進めることが大事だと思います。
星:経営とは、短期と中長期という異なる概念をいかに両立させるかがポイントだと思っています。目の前のPLを作れなければ、当然ファイナンスもできないというのは大前提ですが、短期の施策だけだとどこかで持続可能性がなくなる可能性が高まると思うんですよね。
中長的、短期どちらが大事か、というのに対してどちらも大事という意思決定をして、またそれを実際に行動に移すというのはそう簡単なことではないと思います。土岐は「高度な高次元でのバランス」という言葉をよく使うんですけども、中長的、短期どちらにおいても最善を尽くすというところから逃げないことが重要だなと思います。
また、代表である土岐が私の意見をちゃんと聞いてくれて、背中を押してくれているのはかなり大きいなと思います。やはりスタートアップにおけるこの論点は、正直トップの考え方やコミットメントの強さで、やり切れるかどうかが変わってしまうと思いますね。

編集後記
おふたりにお話を伺ってまず驚いたことは、土岐さんも星さんも事前の打ち合わせなく、同じ言葉を同じ意味、同じタイミングで使用していることでした。パーパスとバリューを言語化し浸透させるにあたって、また経営陣の多様性に関して検討するにあたって...など様々なタイミングにおいて議論を尽くしてきたというエピソードがありましたが、まさにそれを感じ取れる時間でした。
経営陣の考えがしっかり一致していることも、多様性のある組織づくりを「姿勢」だけでなく「行動と数値」がついてきている状態を実現するための一つの重要なポイントではないでしょうか。
本インタビューはおふたりの思いは勿論、具体的に実施した施策やケースについても触れています。ご覧になっていただいた方は、ぜひオリジナルのストーリーを紡ぎ、「自分たちができることから、一歩一歩始めようよ」というメッセージを受け取って日々の行動や考えに活用していただけると嬉しいです。
中田 莉沙 (Lisa Nakada)
Startup Lights Founder
学生時代よりスタートアップ企業でインターンを経験。大学卒業後、野村證券にて営業を経験。2018年2月にフォースタートアップスに入社。タレントエージェンシー本部シニアヒューマンキャピタリスト兼事業開発スペシャリストとして従事。2020年ビズリーチヘッドハンターオブザイヤー IT部門 MVP獲得、2020年11月フジテレビ系列「セブンルール」、2022年3月NHK「コワくない。就活 教えて先輩!」出演。2022年4月にスタートアップから社会課題を解決する「Startup Lights」を発足。