空が社会インフラとなる未来を実現するエアロネクスト。フォースタがつないだ素晴らしいパートナーとの出会い

2022-01-24
Case Study
空が社会インフラとなる未来を実現するエアロネクスト。フォースタがつないだ素晴らしいパートナーとの出会い

株式会社エアロネクスト(以下、エアロネクスト)は、産業用ドローンの基本性能や物流専用ドローンの運搬性能を向上させる独自の機体構造設計技術『4D GRAVITY®︎』を有する、次世代ドローンの研究開発型スタートアップです。機体開発と並行して、ドローン配送サービスの社会実装を目指し、次世代物流ソリューションを提供する株式会社NEXT DELIVERYを設立。技術とサービスの両面から自ら市場を創造し、強固な特許ポートフォリオを武器にドローンビジネスにおいて圧倒的な勝者になろうとしている会社です。

 

その強力なパートナーがJA三井リース株式会社(以下、JA三井リース)。農林中央金庫と三井物産を主要株主に持つ総合リース会社で、強みを持つ農業分野に加え、モビリティ領域を新たな注力分野に位置づけています。2018年からベンチャー投資を本格化させ、シナジー創出のための戦略投資を目的とする方針の下、2021年11月、エアロネクスト社への出資を行いました。

 

フォースタートアップス株式会社(以下、フォースタ)がつないだ今回のご縁。本インタビューでは、エアロネクストが展開する独自のビジネスモデルと、そこにどうJA三井リースが関わるのか、両者の出会いと狙いについて聞きました。

 

株式会社エアロネクスト

代表取締役CEO 田路 圭輔

JA三井リース株式会社

プロジェクト本部 サステナブルライフ事業部 藤原 桃子

フォースタートアップス株式会社

アクセラレーション本部 資本業務提携支援担当 荒井 勇作 


2022年はマジックイヤー。技術を磨き、製品を開発し、いよいよ独自技術搭載ドローンの量産化へ



事業内容や現在、取り組んでいることを教えてください。


田路:ドローンは元々空撮機ですが、それだけではなく、モノを運び、ヒトを運ぶことに大きな可能性があると考えています。我々は、モノとヒトが移動する社会において必要となるど機体を発明した会社です(機体構造設計技術「4D GRAVITY®︎」)。

 

我々の強みは特許。創業者であるエンジニアが発明した技術を特許に変え、そこからさらに技術を磨き、原理試作を発表し、サービスを発表するという具合に事業レイヤーを上げてきました。そしていよいよ弊社独自技術を搭載したドローンを量産化するタイミングに来ており、自らの手で物流領域の市場をつくっていくために2021年1月、ドローン配送サービスを中心に次世代物流ソリューションを提供する戦略子会社、株式会社NEXT DELIVERYを設立しました。

 

会社の場所は山梨県小菅村。ポイントは、人口700人の過疎の村につくったことです。理由の一つが、ドローンを飛ばすことができる場所であること。小菅村で、まず獲りたかったのが「日本でいちばんドローン配送をやっている会社」というブランドで、それは既に実現しました。やはり、サービスは毎日続けて改善を繰り返すことでレベルアップします。決まったモノを決まった地点に運ぶだけの実証実験は、もう意味がありません。普通に飛び、普通にモノを運べる今、大事なのは人々の生活を支える物流インフラのなかで、ドローンがどこにはまるのかという検証です。

 

NEXT DELIVERYで展開しているのは、陸路の配送も含めた総合配送事業です。ドローン配送”だけ”の会社ではありません。なぜなら、ドローンは天気が悪ければ飛ばすことができないし、現状の積載量は5キロまで。これでは配送サービスとして成り立ちません。我々は、配送事業全体のなかで、これまでは100%トラックで運んでいたものを、1個でも2個でもドローンで運ぶことに取り組んでいます。これが10個、20個と増えても、トラックがゼロになることはありません。最終的に50:50あたりになるのでしょう。想定されるこの未来に対し、ドローンだけをやっている人は永久にたどりつけません。そんな中我々は、陸の配送と空の配送を組み合わせる仕組みを思いつき、大手物流会社の西濃運輸を傘下に持つセイノーホールディングスと提携しました。これが今の姿。既に200回以上のドローン配送を実現していて、全国の自治体が小菅村に視察に来ています。

 

視察者はすでに100組以上。多すぎて対応しきれないほどです。これこそが小菅村を選んだもう一つの理由で、東京からのアクセスの良さです。多くの自治体に見学に来ていただき、視察後は「ウチの町でもやりたい」と言ってお帰りになります。現在は3都市との連携協定を発表済みで、さらに5都市が決定済み。半年後は100都市くらいになっているかもしれません。それほどのスピードで実現できるモデルを確立しつつあるのです。そして、JA三井リースさんと組めたことで、展開スピードは間違いなく上がっていくでしょう。

 

今後はどのような展望を描いていますか。


田路:2022年はドローン業界におけるマジックイヤー。いよいよレベル4(国土交通省が定めるドローン飛行の環境整備の段階。レベル4は「有人地帯における補助者なし目視外飛行」)が解禁になり、ドローンが市街地上空を飛べるようになります。落ちることが前提だったドローンが、落ちてはならないものに変わる瞬間です。2022年は、ドローン産業が大いに盛り上がり、投資家がドローンという産業が投資対象になるかどうか、判断する年になります。正直、今は、投資家にとって魅力的な市場かどうか微妙なところ。今年1年のアクティビティ次第だと考えています。

 

ドローン産業の成長には大きな問題が2つあって、1つは、1回の飛行にコストがかかりすぎること。本来は無人航空機なのに、今は各所に補助者を置き、結果、1回の配送に数万円もかかっています。(2021年12月時点)カメラで監視し、1パイロットが複数機を遠隔でオペレーションするようにならないと、事業としては成立しません。

 

描いている社会は、荷物を運んでほしいとき、プラットフォーム上で「AからBまでドローンでこの荷物を運んでくれる人」と募集をかけると、例えば沖縄に住んでいるAさんが「運びますよ」と請負い、ササっとフライトを組んで「監視」ボタンをポチっと押して飛ばす。つまり、総数Nのパイロットと総数Nの機体をマッチングして動かす社会です。そうなると1配送数十円の世界が実現します。

 

そしてもう一つの問題が機体の値段。今は500万円以上するので、量産効果によりドローンの機体を安くする必要があります。我々は、このN対Nの仕組みをつくることにチャレンジしていて、その大前提には量産化があり、量産するにはマーケットが必要です。このニワトリと卵問題を解く鍵が、JA三井リースさんにあるというわけです。

 

 

機体をサービスに変換して社会実装。
過疎地⇒地域創生⇒JAの連想でご縁をつなぐ



機体メーカーではなく、プラットフォーマーなのですね。


田路:我々はライセンスカンパニーと名乗っています。技術でいちばん成功している状態は市場シェア100%ですが、メーカーでは絶対にシェア100%にはなりません。理論的にシェア100%を達成し得る唯一のスキームがライセンスです。我々は、自前では機体をつくりません。でも、誰かにつくっていただかなければいけない。その方々に益する仕組みが必要で、我々にはそれがあります。我々の技術が、あなたが市場で勝っていくうえで有用な技術であり、かつ、あなたがつくった機体は我々がつくるこの市場で使われます。というストーリーを持っているから、我々は強いのです。

 

だから、順にやっているわけです。「わらしべ長者ビジネス」です。1本のわらをみかんに変え、布に変え、馬に変え、城に変えるというプロセスをドローンでやっている。特許から始めて技術、製品、サービス、プラットフォームにしていく最後の仕上げのところにJA三井リースさんの金融技術が必要なのです。物理的な機体をサブスクリプションやリカーニングというビジネスモデルに分解し、産業自体のエントリーコストを安くしつつ、我々のリターンバリューを上げる仕組みをつくる金融技術。機体を回収する仕組みを何重かのレイヤーにして、ユーザーからすると買いやすい、運用しやすいスキームを構築することですね。投資家目線では、我々は、ハードウェアビジネスだけれども限りなくSaaSに近いモデルに見えているはずです。


JA三井リースさんサイドのストーリーも教えてください。



藤原:当社は、2018年に総額50億円の社内ベンチャーキャピタル・ファンドを立ち上げ、主にDX、モビリティ、農業、医療の領域で、当社グループと親和性のある会社を対象に出資していく方針が定められました。この方針に沿って、エアロネクストさんへの出資に至ったわけですが、決め手はやはり、ドローンメーカーにとどまらず、サービスレイヤーを物流事業の領域まで事業を広げている点が魅力的だったからです。 


というのも当社では、単純なキャピタルゲインを狙う出資より、シナジー効果を狙い、一緒に事業をつくりあげていく会社さんを出資対象としています。エアロネクストさんはすでにNEXT DELIVERYを立ち上げており、当社としても農業やほかの事業へのつなぎこみが想定でき、親和性を見いだせた点も評価しました。 


JAグループの一員として、当社は、地域創生に関わる取組を積極的に進めており、「ウチが何とかしなければ」という意識が強くあります。過疎地では人が減り、JAも統廃合が進み、地域への支援がさらに難しくなるという課題もありました。これまで、様々な提案を行ってきましたが、地域の物流課題を解決するエアロネクストは、まさに我々の求める社会的価値を提供できる会社だと確信し、ご一緒させていただいた次第です。

 

その両者を結びつけたのはフォースタートアップスでした。




荒井:はい。田路さんからは、ドローンの技術そのものより、インフラ化し、いかに社会に浸透させていくかが事業のポイントだと聞いていました。そのために必要なパートナーを想像するなかで、小菅村のプロジェクトからJAという看板が思い浮かびました。

 

一方、JA三井リースさんからは、モビリティ領域について、インフラとサービスで社会全体にどのようなことができるかを考えているとお聞きしていたので、それが僕の頭のなかでつながりました。その頭の中を田路さんにご提案したところ「ぜひお会いしたい」と言っていただき、MTGの場をアレンジさせてもらいました。その後は、田路さんと藤原さんがフロントに立って、難所も乗り越えて手を結ぶことになりました。

 

そもそも、スタートアップ企業は事業会社に対して、ベンチャーキャピタルに断られたから出資を求めているわけではありません。田路さんがおっしゃるように、自分たちが描く未来に対して誰と組めば早く、かつ最大化できるのかということを、常に考えています。おつなぎするには、事業会社側の皆さんが、どんな環境で、どんな人と、どんなことをやりたいと考えているかを正しく把握していることが必要で、その点、今回は最適な縁を結べたと思っています。


 

絶対に必要な金融スキームとインフラの可能性拡大。
一粒で何度もおいしい組み合わせ




エアロネクストさんサイドのストーリーもお願いします。


田路:我々にとって、この事業を発展させていくうえで絶対に必要なのは金融スキームです。機体だけあってもダメ。オペレーション、メンテナンス、保険などのサービスが必要で、ドローンを使いこなすには何らかのファイナンススキームが必要と思っていました。金融領域のパートナーが不可欠で、なかでもリース会社をイメージしていたので、JA三井リースさんの名前を荒井さんから聞いたときに「これはいい」と思いました。

 

最初にインストールするのが過疎地だから間違いなく相性がいい。加えてドローン配送だけで事業を組み立てるのは難しいので、配送インフラをつくったら、そこで様々な会社がアプリケーションを動かせるプラットフォームにしたい。過疎地といえば一次産業です。JAとの関係ができれば、これはマルチユースに広がりが見える。単なる金融スキームの話ではなく、組み合わせで「1粒で5度おいしい」と、パパパとイメージがわいたので、すぐに会いたいと言いました。

 

荒井:本当に音が聞こえてくるような、すごいパパパでした(笑)

そこまでイメージを描ける相手なら、何としてでもこの話をまとめなければと思いました。幸い1回目からいい面談ができた印象ですが、とはいえJA三井リースさんはドローンへの出資は初。社内で超えるべきハードルがたくさんあったのではないですか。

 

藤原:そうですね。社内承認を得るには、、出口だけでなく、一緒に組めるかという点を重視されるので、まずそれを整理するために、毎日のように田路さんからお話を聞きました。さらにJAグループが主催している『JAアクセラレーター』というビジネスプランコンテストにも応募していただきました。

 

田路:応募しました。賞も獲りました(笑)


 


藤原:ありがとうございます。実証もしていただき、農業へのつなぎこみを、想像だけでなく実際に見せてもらいました。やはり、地域創生の意義ある取組であっても、企業である以上、経済性を無視してはいけないと思うのです。なので、素晴らしい技術で、この取組が事業としても成り立つということを、かなり深掘って田路さんに聞き、社内で説得して回りました。エアロネクストの事業内容もとても重要ですが、結局のところドローン市場自体が発展途上なので、私たちが描いている未来が本当に来るのか、という点での整理がかなり必要でした。

 

田路:そこは我々も同じで、ドローン産業に関わるすべての会社が行き当たっている命題ですね。我々は、市場はあると信じています。問題はいつ来るかで、この立ち上がりポイントが10年先なのか、5年先なのか、3年先なのかという話です。「市場は確実に来るし、我々はその速度を速める技を持っています。市場ができたときにいちばん勝っているのは我々です。だから投資するならウチです」と言って、藤原さんに社内を説得してもらいました。

 

だから、ひとえに藤原さんの頑張りなんですよ。本当に我々に食いついてくれて、魅力を見つけ出してアピールしてくれました。

 

荒井:いい話ですね。スタートアップとの信頼関係において、事業会社サイドの担当者の熱意はとても大事です。我々も、「何々社に会ってほしい」ではなく「誰々さんに会ってほしい」ということを、常に考えながら支援しています。

 

田路:ハードウェアビジネスをサービスビジネスへ変換するアイデアを考えるとき、私は何しろ金融の知識もリテラシーもないので、すぐ藤原さんに相談します。そうすると「これはできます」とか「こうしたらいい」と答えてくれて、さらに仕組みが見えてくると上司と掛け合って、すぐに動いてくれます。もうウチの社員のよう。本当にありがたいです。我々としても、ドローン産業が発展すれば直接的にJA三井リースさんのビジネスになることがわかっているので、相談がしやすく、Win-Winの関係にあるベストパートナーだと思います。


 


荒井:出資して終わりではなく、これからですね。ファイナンスリターンもあるけども、何よりエアロネクストさんに伸びてもらうことが、JA三井リースさんの事業拡大につながりますね。

 

藤原:はい。当社としても、そこは期待している点です。

 

田路:私は、藤原さんの関心が失われないように頑張るだけです(笑)

やはり、投資していただいた後に、この人が伴走してくれるという人がいないと、いくらJA三井リースという看板とケイパビリティがあっても使いこなせません。どんなビジネスモデルを持っていても、藤原さんがいなかったら動かせない。ドローンっておもしろいと思ってもらうと同時に、社内のビジネスにつながるという両面をつくらないと、いい関係を続けられないと思いますね。

 

 

フォースタは成功請負人。人材、VC、出資支援など多方面での支援に期待




最後にフォースタへの期待もお聞かせください。


藤原:今後も、今回のような良い出会いをいただけたら嬉しいと、それに尽きます。

 

田路:フォースタはもう3、4年のつきあいになるのですが、お取引はあまりありませんでした。というのも私が、20世紀型のヒト、カネ、モノに頼ってドライブするビジネスではなく、ブランドや特許などの無形資産をレバレッジにして会社を大きくするビジネスを志向しているから。フォースタさんにヒューマンリソースをお願いする機会がなかったのです。ただ、折々にアドバイスをもらういい関係で、そのなかで、実はファイナンスでも貢献できると聞き、実際に今回、資本業務提携支援サービスというスキームでフォースタさんとつきあえたことは大きな発見でした。

 

フォースタは革命的な会社だと思っています。人材紹介ではなく成功請負人。ツールが人だったり、資金だったりしますが、本質は、成功するとはどういうことか、体系的な知見や手法を持ち、世に提示している会社です。一方で動き方は投資家に近く、成功する会社、リターンの取れる会社にリソースを集中することが特徴的な会社でもあります。

 

だから、自分も選ばれないといけないと思わせる会社なんですね。我々がフォースタに選ばれないといい人材を採れない。これは素晴らしいWin-Winの関係です。一方向の力学ではない関係を、ヒューマンリソースを中心とした領域でつくっている、とても魅力的な会社だと思います。

 

これまでは接点が持ちにくかったのですが、今回のこともあり、改めてこれから接点を増やしたいと思っています。特にNEXT DELIVERYのほうはヒューマンリソースを必要としていますので、フォースタさんに対して当社をアピールしないといけませんね。


 

荒井:ありがとうございます。今は、人材のほかにもベンチャーキャピタルや、今回のような事業会社との接点づくり、行政との連携など様々な形でスタートアップ企業を支援できる形を目指しています。これをきっかけに引き続きどうぞよろしくお願いします。




取材のご協力:株式会社エアロネクス、 JA三井リース株式会社
株式会社エアロネクスト

https://aeronext.co.jp/

https://www.jamitsuilease.co.jp/

インタビュー/撮影:山田雅子・渡辺 健太郎



Related Challengers